西表島の大自然やツアー内容をご紹介
日本の端っこ・西表島の日常や島民しか分からないレアな情報も登場するかも!?
普段はこんな本を読んでます。2020/02/17
西表島でネイチャーガイドをしていると、「よく聞かれる質問」というのがあります。
「どうして西表に住もうかと思ったんですか?」「ヤマネコって見たことありますか?」といった質問が多いですが、
「休みの日は何してるんですか?」というのもよく聞かれます。
石垣島に遊びにいく、ひたすらお酒を飲む、という人もいますが、僕の場合は天気のいい日は山へ生き物観察、雨の日は家で読書というまさに「晴耕雨読」といった感じです。
そういうわけで、今回は僕が普段読んでいる本を紹介します。
「オサムシ 飛ぶことを忘れた虫の魅惑」
多くの種類がある昆虫の中でも、翅が退化し飛べなくなってしまった「オサムシ」をテーマにした本です。
今年の冬の長期休暇の際、東京の実家に帰ったのを幸いに本州でオサムシを採りまくり、その魅力にすっかりハマってしまいました。
はて、オサムシとは?
アオオサムシ佐渡島亜種(サドアオオサムシ) Carabus insulicola sado
マイマイカブリ粟島亜種(アオマイマイカブリ) Damaster blaptoides fortunei
こんな姿のヤツら。
そして、その姿や生態に魅了された著名人も多いです。
漫画家の手塚治虫も本名の「手塚治」を変えわざわざ「手塚治虫(てづかおさむし)」をペンネームにするほどの熱烈なオサムシファンだったそうですが、手塚治虫氏、と呼ぶ際に「おさむしし」となり呼びにくいとの理由で、読み方はそのままで虫の字を残したそうです。
オサムシの魅力の一つに、地域変異や種類の豊富さが挙げられます。
そもそも、生物の「種」とはなんでしょうか?
いろいろな定義はありますが、一般的には「自然条件下で交配し子孫を残すならば同一の種、残さないならば別の種」といことになるでしょうか。
ヒトとチンパンジーが共通の祖先から枝分かれしたように、生物は何千年何万年という時間をかけて進化し、様々な種への分化を繰り返してきました。
一つの種から二つに種が分かれるということはすなわち、外部的または内部的要因によってある生物群の中で自由な繁殖が困難となり、生殖的に隔離された結果それぞれがの集団が違う特徴を獲得し新しい種となる、ということです。
この要因というのは、大陸と地続きだった土地が海面上昇で島となり、大陸の集団と物理的に隔離されてしまうことであったり、突然変異により母集団と繁殖行動のとれない形態を得てしまうことだったりします。
話をオサムシに戻しますが、翅がなく飛べないということは、基本的には地上を徘徊するしか移動の術はなく、広範囲への拡散ができないということ。
そして川などの障害物があれば、飛んで移動することを知らない彼らはいとも簡単に他集団との生殖が封じられてしまうということです。
すなわちオサムシは島ごとに、それどころか川を挟んですぐ向かいには別の種が棲んでいるというように、実に豊富な多様性があるということです。
このような特性から、オサムシは進化分類学を研究する上で重要な素材としても利用されています。
また、独特の生態を持つものが多いのも特徴です。
マイマイカブリ Damaster blaptoides
日本人には以外と馴染みのある昆虫で、これもオサムシの一種。見たことのある方もいるかもしれません。
オサムシの仲間はミミズ、毛虫、腐った果実などを食べますが、マイマイカブリの主食はカタツムリ。
カタツムリの身を殻の中まで効率良く食べるために、首が伸びてしまったというなんともユニークなヤツです。名前の由来も、マイマイ(カタツムリのこと)にかぶりつく、もしくは被るといった様子からきています。
こちらはマイマイカブリ佐渡島亜種、サドマイマイカブリDamaster blaptoides capito 。
通常のマイマイカブリのようにカタツムリの殻に首を突っ込むのではなく、殻ごとバリバリと噛み砕いて食事をするため、アゴは丈夫に、そしてそれを動かす筋肉も大きくなり首が太くなります。
このように、生態によって同じ種でも形状が変化するのがおもしろいところです。
これらのマイマイカブリ、実は日本の固有種で、海外のオサムシコレクターからは憧れの的だったりします。
どうでしたでしょうか、少しはオサムシに興味が湧いてきましたか?
完全に読者置いてけぼりの誰得ブログですが、普段からこんな本を読んで勉強もしてますよーということです…笑
ちなみに、この西表島にはオサムシは一種類も生息していません。
今までの話はなんだったんだ…
スタッフ 船越