西表島の大自然やツアー内容をご紹介
日本の端っこ・西表島の日常や島民しか分からないレアな情報も登場するかも!?
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虫にーにーの台湾旅行 〜昼の虫採り編〜2025/01/20
台湾では観光もそこそこに、昼間は設置した昆虫用トラップの見回り、夜は自前の設備でライトトラップをしていました。
今回は、昼にどうやって虫を採っていたのかをご紹介します。
台湾の知り合いに頼んで、前日から昆虫用のトラップを作ってもらいました。いわゆるバナナトラップというもので、レシピは人によって様々ですが、バナナやパイナップルなどのフルーツに焼酎、ドライイーストなどを加えて発酵させることで、樹液に集まる虫を誘き寄せるものです。
このトラップ、フルーツが発酵するまでに数日かかるので、現地に到着してからフルーツを購入していては間に合いません。奄美大島でトラップを仕掛けた際には、あらかじめ用意したバナナを持って行きましたが、とにかく重かったのでもうやりたくありません。台湾に知り合いがいるというのはとてもありがたいことですね。
これをストッキングなどに詰め、木にぶら下げておくと……
写真中央、枝に下がっている黒いやつがトラップです。何かついてますね。虫採り網で揺すって落としてみます。
アスタコイデスノコギリクワガタでした。台湾ではポピュラーなクワガタらしく、昼のトラップでも夜のトラップでも、結構な数がいました。日本のノコギリクワガタとは全然違いますね。
続いてのトラップで採れたのはハナムグリやカナブンの仲間。色とりどりで綺麗です。緑のはキンカナブン、オレンジのはタイワンツノカナブン、青のはナカバヤシツヤハナムグリという名前。これらは全て違う種類の虫です。
しかし、日本のカナブンのように、同じ種でもカラーバリエーションが豊富な場合もあってややこしい。
オレンジ色のタイワンツノハナムグリもそうした中の一種らしく、普通は緑色で、オレンジ色は200頭に1頭ぐらいだそうです。ラッキー。
ハナムグリの仲間はクワガタとは違い、日中に積極的に飛び回り餌を探すので、少し目を離すとまたどこからか集まってきます。
ワリックツノハナムグリ。クワガタのような二股のツノを持ちますが、クワガタのように顎が発達したものではないので、挟むことはできません。ツノの使い道はクワガタと同じで、喧嘩のため。そのツノと長い前脚を使って敵を投げ飛ばすようです。ちなみに、メスにはツノはありません。
このトラップは1週間くらいは効力があるので、旅の初日に仕掛けておけば毎日見回るだけで虫が採れます。使い終わったらトラップの回収は忘れずに。
フルーツトラップによる採集以外にも、スウィーピングによるカミキリムシの採集もしました。
スウィーピングとは虫採りの技法の一つで、草むらなどで網を左右に振ることで、そこに隠れている虫をまとめて網にいれてしまう技です。カミキリの場合は5メートル以上ある長い虫採り網を使用し、手の届かない高さの木の葉を網でバサバサ叩くことで、葉の影に隠れているカミキリを網の中に落とす目的で行います。カミキリ、タマムシ、ゾウムシなどの植物の葉を食べる昆虫を採りたい時によく使う方法ですね。とにかく手当たり次第に葉っぱを揺らしてみて数を打つことが多く、何も網に入っていないことは多いですが、網を覗き込んだ時に目当ての昆虫が入っていた時のテンションの上がり方はすごいです。
いくつか、捕まえたカミキリを紹介。
西表島に生息するイツホシシロカミキリに似ていますが、同じシロカミキリ属の仲間です。体の白色は細かな毛の集合でできていて、長く生きていると表面の毛が擦れてしまい、白色が禿げてしまします。
西表島に生息するイワサキキンスジカミキリに似ていますが、同じトホシカミキリ族の仲間です。メタリックな水色が美しいです。
台湾と西表島は距離が近いだけあって、生息しているカミキリの種類は違っても共通する部分も多いです。おかげで、なんとなくの分類は調べなくても見当がつきます。
これはさすがに西表にも似た仲間はいないかも?灰色のまだら模様で、木の表面の地衣類に擬態しているのでしょうか?木の幹をトコトコ歩いているところを手で掴みました。
他にも様々なカミキリがいました。やはり島の面積、標高差ともに西表とは桁違いですから、虫の数もこちらの方が圧倒的に多いです。西表ではこんなにポンポンと虫が採れてはくれない印象です。ちなみに、現在西表島で確認されているカミキリの種数は104種ですが、台湾では800種を超えるそうです。
次回に続きます。
虫にーにーの台湾旅行 〜導入編〜2025/01/08
あけましておめでとうございます!
2025年もカヌーガイド業はそこそこに、まだ出会ったことのない虫を追い求めていこうと思います(笑)
去る2024年6月。1週間ほど休みを貰い旅行に行ってきました。いや皆さんは薄々お察しの通り、目的は昆虫なんですが……
ゴールデンウィークの果てなき連勤に嫌気が差し、現実逃避のため、前回のマレーシアに続いて海外へ旅立つことにしました。
今回の目的地は台湾。治安も良く日本人にも優しい国のようで、初めての海外旅行先としておすすめされることも多いと聞きます。
そしてなにより、距離が近い。というか、近すぎ。西表島からは間に与那国島を挟みつつ200キロしか離れていません。西表島と沖縄本島の距離がおよそ400キロなので、単純な距離だけなら台湾の方が近いです。台湾の高い山の上からなら、天気が良いと与那国、西表、石垣、波照間の各島が目視できるそうです。
そんな台湾ですが、気候としては西表島と同じ亜熱帯〜熱帯気候。はるか昔には西表を含む沖縄諸島と地続きだったこともあり、暮らしている生き物にも共通するものが多いです。何を隠そうあのイリオモテヤマネコも、中国大陸と八重山諸島が地続きだった頃に台湾を経由して歩いてきたベンガルヤマネコが由来です。その後の海面上昇により西表島が島として独立した際に取り残されたベンガルヤマネコが、島暮らしの中で独自に進化したのがイリオモテヤマネコだと言われています。実際、発見当初は「イリオモテヤマネコ」という西表島にしかいない独立種とされていましたが、現在では分類上「ベンガルヤマネコ西表島亜種」という扱いが主流になっています。
そんな感じで西表島と共通する生き物の多い台湾。いつも島で見ているのと同じような生き物をわざわざ採りに行くのか?と思われそうですが、もちろん似たようなといってもスケールは全然違います。
まず島の面積。西表島の面積はおよそ289平方キロメートルですが、台湾はその125倍、約36000平方キロメートルです。
一番高い山にしても、西表島が古見岳の470メートルに対して、台湾は玉山の3952メートル。文字通り桁が違います。ちなみにこの玉山、昔は新高山と呼ばれ、台湾が日本の統治下にあった戦時中は、富士山を差し置いて日本最高峰の山でした。真珠湾攻撃、そして太平洋戦争開戦の指示となった有名な暗号文「ニイタカヤマノボレ」の新高山ですね。
そんなわけで、台湾の魅力はその広大な面積とおよそ4000メートルの標高差からなる多様な自然と生き物。同じ島でも北と南、低地と高地では自然の種類が異なります。西表島とほぼ同じ緯度の熱帯気候にありながら、山の頂上付近は寒帯のツンドラ気候であり雪も積もるというのですから驚きです。
今回の目的は当然昆虫なわけですが、その中でも狙うのはクワガタ、カミキリ、ハナムグリといった甲虫たち。台湾はチョウ大国とも呼ばれるくらいチョウの種数、個体数も多いのですが、今回訪れたのはまだ梅雨も明けきらぬ6月。晴れ間の覗かない日では難しいかもしれません。
台湾は地図で見ると西表島のすぐ近くですが、西表から行くにはそれなりに時間がかかります。というのも、コロナ禍以前は存在した石垣〜台湾をつなぐ国際線が現時点では運行していないからですね。そのため、台湾への便が出ている那覇空港まで一度引き返す必要があります。
那覇で一泊の後、朝の飛行機で台湾入り。
台湾は、ピーチ航空から安い便が出ているので便利ですね。
台北、桃園国際空港の気温は24度。意外と涼しい。
今回はマレーシアの時とは違い、台湾在住の知り合いの方に案内してもらいました。
現地の事情に詳しい方がいるというのは心の余裕にも繋がりますね。
早速、車に乗って高速道路で南の方角へ。ちなみに、台湾の高速道路は料金所が全くなく、使った道がすべて自動で記録され、料金が引き落とされるようでした。かなりハイテクですね。
向かったのは南投県にある埔里(プーリー)という街。
台湾の中心の山岳部にある街で、亜熱帯気候で湿度の高い森が周囲には広がっています。その環境から、数多くの生き物が生息しており、昆虫観察をする人がよく訪れるそうです。「木生昆虫博物館」という、台湾では有名な昆虫の博物館があるのもこの街です。
途中で少し山に立ち寄り、生き物がいないか見てまわります。
台湾のキノボリトカゲでしょうか。いつも見ているサキシマキノボリトカゲより一回り大きいです。台湾にはキノボリトカゲの仲間が複数いるので、見分け方がよくわかりませんが、おそらくスウィンホーキノボリトカゲですかね。西表のトカゲと捕まえ方は一緒で、簡単に尻尾を捕まえることができました。
キゴマダラ。オスとメスで翅の模様が大きく違うチョウですが、これはメスです。
マダラ、とついていますがマダラチョウの仲間ではなくゴマダラチョウ、つまりはタテハチョウの仲間。オオムラサキなんかの親戚ですね。
台湾でも数は少なく、中でもメスは珍しいとのこと。正直、今回の台湾旅行は連日の雨のためチョウはほとんど採れなかったのですが、その数少ない中で当たりを引いたようです。
明日以降に備えて、昆虫用のトラップを仕掛けたりもしました。クワガタなんかが集まってくれると嬉しいです。
知り合いの人に案内されて、都市部にある昆虫ショップに寄ったりもしました。
子供たちやマニアに人気のカブト、クワガタがペットとして売られています。こういった専門店は子供の頃から何度も訪れていたので、落ち着く光景ですね。
ある程度の年齢の男性なら、誰もが子供の頃には虫を捕まえたり、カブトムシを飼育したりといった経験があると思います。が、そういった昆虫に親しむ文化は日本固有のもので、ヨーロッパなどの諸外国では子供が皆通るような一般的な遊びではない、と聞いたことがあります。こういった専門店があるあたり、台湾ではどうなのでしょうか?
夜は、有名な夜市へ行ってきました。虫屋にとって夜は勝負の時間。呑気に観光などしている場合ではないはずなのですが、台湾の夜市での食事は前々からの憧れでした。知り合い曰く、あいにくの雨のため、いつもより屋台の数がかなり少なかったらしいです。いつもはこの駐車場が屋台で埋め尽くされるとのこと。
蚵仔煎(オアチエン)と呼ばれる台湾料理の屋台。牡蠣を使ったオムレツのような料理のようです。卵を使ってはいますが、オムレツとお好み焼きの間みたいな感じで美味しいです。ソースではなく甘辛いチリソースで食べました。
他にも様々な屋台があって目移りしてしまいます。全て食べたいところでしたが、お金にも胃の容量にも限界はあります。他に大鶏排(ダージーパイ)、つまり特大の鶏の唐揚げなど何品か食べて終了。
台湾の屋台を満喫しました。
次回に続きます。
虫にーにー、マレーシアへ行く 〜グルメ編〜2024/09/19
旅行といえば、皆さんが気になるのはその国独特の食べ物ではないでしょうか?
そんなわけで今回は、この旅行中に食べたマレーシア料理をご紹介したいと思います。といっても、基本的に昼はジャングルの中で菓子パンを咥えながら虫採り、夜は飯を食ったらまた虫採りに行くか疲れて寝てるか……といった感じだったので、ガイドブックに載っている評判の店!みたいなのは一切出てきません。自分のことながら、昆虫以外のものへの興味がなさすぎる……
食レポにも自信はありませんが。
まず初日の夜に食べたのはマレーシアの定番料理、ナシ・レマ。「ナシ」は米、「レマ」はココナッツの油のことで、文字通りココナッツミルクで炊いた米のことです。
付け合わせの具材は色々とレパートリーがあるそうですが、キュウリ、揚げたピーナッツ、卵、そして小魚を素揚げにしたイカンビリスというものが一般的。真っ赤な色をした甘辛ソース、サンバルソースも大事。今回はそれらに加えてスパイシーなカレーもありました。
マレーシア料理は唐辛子を多用するため、辛い料理が多いそう。苦手な人には大変かもしれませんが、辛いもの大好きな自分にとっては望むところといった感じ。辛そうな料理をどんどんチャレンジしていきたいところ。
謎の米料理とラムチョップ。
米料理の方はメニューに「キャメロンハイランド」とこの街の名前がついていたので、街を代表する料理なのかなと思って注文してみた。見た目は奇抜ですが、マレーシアではこのように着色した米を使った料理は珍しくないらしい。今回はトマトで色をつけたのでしょうか?
味は海鮮系、特にエビの香りと出汁が美味しかったです。キャメロンハイランドは高原野菜も特産なので、付け合わせの野菜もこの辺りでとれたものなのかもしれません。
ラムチョップ、つまり羊の肉も日本ではあまり馴染みがないですが、マレーシアでは定番。というのも、マレーシアはマレー系、インド系、中国系の人種からなる多民族国家であり、各々信じる宗教も異なるため、一般的な店ではイスラム教、ヒンズー教がそれぞれ食べることを禁止している豚肉、牛肉を提供しないことが多いからですね。必然的に鶏、羊、魚を使った料理が多くなるわけ。
羊肉を食べる機会もそうあるわけではないので試しに注文してみたが、なかなかに美味しかったです。
お次はカレー。インド系の人も多いためカレーも一般的なメニューで、大抵はチキンカレーかフィッシュカレー。ナシ・レマも一緒に。
味としてはかなりの辛さ。カレーの本場インドとは昔から交易があったため、マレーシアのカレーもスパイスをたくさん使った本格派。素人にはよくわからないスパイスの香りで混沌としていますが、美味しかったです。
キャメロンハイランドでは夜遅くまで屋台や市場がやっています。夜中にちょっと小腹が空いたな、という場合にもおすすめ。街は明るく、人通りもかなり多いので、夜に出歩くことの心配もなさそうでした。
屋台で購入したもの。揚げたチキンに甘辛いタレ、チーズをかけた料理のようです。
他にも色々な味があり、値段も12リンギット、つまり360円くらいとお手頃なので、何日か通ってしましました。
キャメロンハイランドの観光地にもなっている、広大な茶畑も見学。その際に食べた、いちごのチーズケーキとシナモンティー。イチゴもキャメロンハイランドの名物です。
シナモンティーはかなりスパイスが効いていて辛口。マレーシアではお茶さえも辛くなってしまうのか?しかしこの辛さをチーズとイチゴソースの優しい甘さが和らげてくれます。そういえば、今回の旅行中は甘味のあるスイーツ的なものを全然食べていませんでした。やはり甘味はいいものですね。
最後に、個人的に一番印象に残ったもの。
ここまで散々マレーシア料理を紹介しておいて身も蓋もない話ですが、空港で食べたケンタッキーフライドチキン、これが一番かもしれません……
西表島では滅多に食べることができないし、まあケンタッキーなんて世界中どこで食べても同じ味でしょ、くらいで注文したのですが、もう全然違いました。
英語もよくわからなかったので、一番オーソドックスなものを頼んだはずですが、まず辛い。日本のケンタッキーの辛いやつより辛いです。
衣もザクザクとした食感で、上にはチーズソースが乗っている点も日本とは違いますね。辛い物好きとしては、かなりの高評価でした。
やはり鶏肉を食べる人が多いマレーシア、ケンタッキーフライドチキンもそれだけ人気で、美味しいということでしょうか。いつも通りの味を想像していた分、衝撃は大きかったです。
マレーシア料理は極端に辛い、もしくは甘いというイメージもありましたが、自分は何の不満もなく全て美味しく食べることができました。
東南アジア系の料理が苦手な方も、街中にはカレー屋、中華料理屋が数多く存在します。特に中華料理は日本人に馴染み深く、牛肉や豚肉も扱っているので、味に変化をつけたい人にもおすすめです。
虫にーにー、マレーシアへ行く 〜昆虫編〜2024/08/20
最後はお待ちかね、旅の中で出会った昆虫たちをご紹介したいと思います。
マレーシア、特にキャメロンハイランドが生き物観察にオススメの理由はいくつかありますが、その中でも大きいのは昆虫を捕まえてそれらを売ることで生計を立てている人々の村、通称「19マイル」の存在でしょう。
19マイル。
彼らは昆虫採集の達人。マレーシアの森のことを知り尽くしており、自分一人では見つけることのできないような難易度の高い虫も簡単そうに捕まえてきます。
彼らにお願いすればジャングルの中を案内してくれるとのことで、虫が採れる場所まで連れて行ってもらいました。
やってきたのは日当たりのいい河原。ここには、いろいろな種類のチョウが水を飲みに集まるようです。村人たちはここでチョウを捕まえて、虫好きの観光客や地元のバタフライパークに売ることで収入を得ているとのことです。
昼頃になり、気温が高くなるにつれて様々なチョウが集まってきます。
マレーシアの国蝶、アカエリトリバネアゲハ。
名前のとおり鳥のように巨大なアゲハチョウで、首のところの赤い模様がトレードマーク。現地での呼び方はラジャ・ブルック。
トリバネアゲハの仲間はワシントン条約で保護されているため採って帰ることはできません。
アオスソビキアゲハ。裾引き、の名のとおり、引きずってしまいそうなくらい長い尾状突起が特徴的です。
アゲハチョウの仲間にしてはかなり小さめですが、ハチのように素早く飛び回り、捕まえるのが難しい。
ルリオビヤイロタテハ。青いチョウといえばモルフォチョウが有名ですが、モルフォ以外にも綺麗な青色のチョウは色々います。
網で捕まえるのが難しいくらい飛ぶのが速かったですが、水を飲むために地面に止まったところを狙ってなんとか捕獲成功。
本当はチョウたちの自然な姿も写真に撮りたかったのですが……
写真を撮っている間に逃げられたらと思うと、つい先に網を振ってしまいます。よって、チョウの写真は捕まえた後のものばっかり。
ここでお待ちかねのコーカサスオオカブト登場。ヘラクレスオオカブトと並んでカブトムシ界の人気者。
村人が夜のうちに捕まえたらしく、持ってきてくれました。これでもまだまだ小さいらしく大型のものは体長12センチを超えるそう。
今回はそんな大物には出会うことはできませんでしたが、いつかは自分の手で採ってみたいものです。
村人が捕まえてくれたオウゴンオニクワガタ。黄金色の体が最大の特徴です。日本のクワガタは基本的に黒か茶色の地味なイメージが強いので、この派手なクワガタを見ると海外に来たって感じがします。
擬態名人のコノハムシ。葉っぱそっくりの平たい体で周囲の景色に溶け込みます。虫好きの子供なら一回は名前を聞いたことのある虫です。
子供のころから昆虫図鑑で眺めるだけだった憧れの昆虫たちに次々と出会うことができました。
チョウなんかは、全部で30種類くらいを観察したと思います。
西表島も国内では指折りのジャングルですが、それでもマレーシアの昆虫の多様さには及ばないでしょう。ほんの数日でここまでたくさんの虫に出会うことができました。
マレーシア、その中でもキャメロンハイランドは治安も良く、熱帯のジャングルを存分に味わえる場所。
生き物好きのお子さんがいるご家族での海外旅行にぜひいかがでしょうか?
虫にーにー、マレーシアへ行く 〜登山編〜2024/06/20
マレーシアの多様な動植物相を感じるには、とにかくジャングルの中に入らなければ始まらない!
とはいえ、人っこ一人いないような原生林にいきなり単独で入っていくのはさすがに怖い……マレーシアって野生のトラいるし…
ということで、手始めに他の観光客も多く登る、有名っぽい山へジャングルトレッキングに行ってきました。
宿泊地タナ・ラタの裏手に鎮座する、Gunung Jasar。Gunungはマレーシア語で「山」という意味なので、ジャサール山、もしくはヤサール山でしょうか。
登山口までは街の中心から歩いて30分ほどと、レンタカーがない人でも簡単にアクセスできる点が人気のようです。
キャメロンハイランドにはこの地図にあるように、番号が割り振られたジャングル・トレイルのルートがいくつもあり、このヤサール山は10番になっているようです。
なんてことない住宅街の一番奥に登山口はあります。親切にも看板がありました。
極限まで簡略化された道案内の看板。10って……これだけ見たらなんのことやらさっぱり。
ここを登れということのようです。登山客が多い道はそれに合わせて足型ができてしまうのは、西表島だろうとマレーシアだろうと共通のようです。
雰囲気が出てきました。
あまり自然に興味のない人からすると「西表島のジャングルと一緒じゃない?」と思われそうですが、よーく観察すると全然違いますよ。
一見して気づくのは、西表と違い、木の幹にコケ植物や着生植物(他の木の上などにくっついて生える植物)が多く見えます。写真でも、木の表面が緑色にもじゃもじゃしているのが伝わりますかね?
ここキャメロンハイランドなどの森は「雲霧林」と呼ばれ、文字通り雲や霧でいつも覆われていて湿度が高い森なのです。
この雲霧林は熱帯の、雲がかかる標高1000メートル以上の山にあることが多いです。最大でも標高500メートルに満たない西表の山では、雲霧林とはならないということですね(とはいえ西表島は本州に比べると湿度は高く、マレーシアほどではないですがコケ植物や着生植物はあります)。
こんな植物は野生では初めてみます。ネペンテス、和名はウツボカズラですね。食虫植物の一種で、最近は観葉植物としても売っているので、知っている人も多いかもしれませんね。
細長い袋状の部分に消化液をためます。落とし穴のように袋に落ちてきた虫はツルツルの壁を登ることができず、そのまま溶かされてウツボカズラの栄養になります。
これはさすがに西表のジャングルにもないでしょう。
山頂までの所要時間は、普通に歩いて1時間といった所でしょうか。
ガイドとして毎日山を登り続けて7年、体力と山登りのスピードには自信があります。この程度の山は休憩なしで登ったるわ、と意気込んだのはいいものの、標高の高さは大きな誤算。標高1500メートル越えともなるとさすがに息が切れます。身の程を思い知りました。
ルート上にいたでっかいヤスデ。30センチくらいある。
頂上付近に到着。一番見晴らしがいいのは、頂上の少し手前のこの電波塔の建っているエリア。遠くの山々やタナ・ラタの街を眺めることができます。天気が良くて素晴らしい!
山頂は、電波塔から1分ほど歩いたところ。ヤサール山は標高1704メートルの山らしいです。
外国人観光客の姿もちらほらあります。そこまで大賑わいということはなく、10分に一組が登ってくるくらい。人がいすぎるわけでもなく少なすぎるわけでもない、ちょうどいい混み具合ですね。山頂自体のスペースは広くはなく、いい景色以外は何もないので、皆軽く眺めを堪能した後は戻っていきます。
ですが僕は、わざわざ絶景のためだけにここへきたわけではありません。いや景色も素晴らしいけど、もう一つ……
虫採りだッ!!
アサギマダラの仲間。アサギマダラ自体は西表島にも生息しています。この仲間は海を超えて何千キロも旅をするチョウなので、ここマレーシアに同じ種がいても不思議ではないのですが、いろいろ種類がいて詳しくはよくわからないです。
幼虫時代に毒のある草を食べて、成虫になっても体にその毒を蓄えているため、鳥はこのチョウをわざわざ食べないそう。よって彼らは鳥に狙われる心配などなく悠々と飛んでいるので、捕まえるのは比較的簡単です。
珍しくないやつか……と思いきや、中には毒を持たないくせに、体の色と飛び方をこのチョウに似せて鳥を騙すレア物のアゲハチョウもいるので、騙されずに捕まえましょう。
蛾の仲間です。チョウみたいに綺麗ですが、昼間に飛び回るガです。
「綺麗なのがチョウ、地味なのがガ」、「昼に飛ぶのがチョウ、夜はガ」なんていう見分け方をしていると騙されますね。その見分け方で区別できてしまうことも多いのですが、例外も多くいつでも当てになる方法ではありません。
ニヌスカザリシロチョウ。これが採りたかった!
カザリシロチョウ類は、子供の頃に誰でも一度は見たことがあるモンシロチョウに近い仲間ですが、この南国らしいド派手な色が特徴。しかもこの色、今見えている翅の裏面の方が表面より美しいとされています。
カザリシロチョウの仲間は日本にはいません。海外に行って、そこでしか見られない虫を見るというのがいいですね。
この仲間は東南アジアに広く分布しており、マレーシアにも何種類もいるようですが、この山では時季のせいか場所のせいか、この一種類だけでした。
観光地の山なので、たまに登山客がやってきてはこちらをチラッと見てきます。が、マレーシアは昆虫採集に寛容な国。採った虫を物好きな観光客に売ったり、地元のバタフライパーク(チョウの動物園的な施設)に卸して生計を立てている人もいるくらいなので、文句を言われることはありません。
中には興味を持ったのか、話しかけてくる人もいます。フランス人らしき男性は英語がわからないようでしたが、こちらの絞り出した「パピヨン(フランス語でチョウのこと)」という単語を理解したようで、納得した顔で頷いていました。
目的の虫も採れたところで、ぼちぼち帰宅。
熱帯雨林ではいつ強烈なスコールが降るかわからないので、目標を達成したら晴れているうちに帰るのが吉ですね。
次回に続きます。
虫にーにー、マレーシアへ行く 〜出発編〜2024/06/14
初めましての方は初めまして。サニーデイの生き物担当、虫にーにー改め、ガイドの船越です。
遡ること数ヶ月、3月の頭に休暇を利用してマレーシアへ行ってきました。今回はその時の様子をレポートしたいと思います。
といっても、観光はほとんどせず、相変わらず山登りと生き物観察しかしてこなかったわけですが……(汗
西表島で毎日のようにトレッキングと生き物観察をしておいて、まだ足りないのかと呆れた声が聞こえてきそうですね。
しかし、同じジャングルでもそこにある植物、生息する動物などは国や島によって多種多様であるわけで、そこの違いを比べるのもまた楽しいのです。今回の僕の主な目的は例に漏れずそこにしかいない独特の昆虫ですが、ヘビやトカゲなどの爬虫類、そして西表島とはまた違うジャングルの中を探検するのも楽しみです。
まずは、今回旅をしたマレーシアについて軽く紹介を。
マレーシアはいわゆる東南アジアに位置する国で、ユーラシア大陸から突き出たマレー半島南部と、世界の島の中で第3位の面積を誇るボルネオ島の北部を領土としています。
公用語はマレー語ですが、準公用語として英語もよく使用されているため、観光地ならば英語でも問題なさそうです。英語がほんの少しだけ話せる、という理由で海外からサニーデイのカヌーツアーに参加するゲストはほとんど僕の担当でしたが、おかげで英語力は少し向上したかもしれません。ここにきてその力が役に立ってくれそうです。
治安に関しても、日本ほどではないにしても比較的いいようです。外務省の海外安全ホームページによると、国や地域ごとの危険度の四段階評価のうち、レベル3(渡航中止勧告)とレベル2(不要不急の渡航の中止)が出ているのはボルネオ島にあるサバ州東海岸の一部地域。首都のクアラルンプールをはじめとしてほとんどの地域は危険レベルの対象外です。東南アジアの国の中でも、安全な方らしいです。僕は海外旅行初心者なので、この点はありがたいですね。
自然についても、魅力的な場所がたくさんあります。10ヶ所以上ある国立公園では野生のオランウータン、テングザルなどの動物や、世界最大の花ラフレシアなど、海外ならではの日本とのスケールの違いを見せてくれます。ジャングルクルージングからトレッキングまでツアーも充実しているようですし、美しい海が特徴の観光地ペナン島も大人気。あらゆる場所で、雄大な自然を目にすることが出来ます。
そんな数ある素晴らしい観光地やツアーをすべて無視して僕が訪れた場所、それがキャメロンハイランドです。
ちなみに今回の旅行は完全に一人旅でした。基本的にガイドや通訳の方はおらず、移動も全てレンタカーを借りて自分での運転です。車の運転に関しては日本と同じ右ハンドル左車線ですが、運転マナーが若干荒いのはなかなかに怖かったです。幸い、事故などはせずに済みました。
滞在したタナ・ラタという街。マレーシアというよりヨーロッパっぽい街並みのような気も。ヨーロッパ行ったことないんですけど。
キャメロンハイランドとは、このタナ・ラタの街を主として広がるパハン州の高原リゾートの総称。もともとはイギリスの統治下にあり、当時の国土調査官キャメロンによって発見されたことが由来のようです。その後リゾート地として開発が進み、標高1500メートル以上のため年間を通じて平均気温20度前後と南国のマレーシアにしては過ごしやすいこともあり、今でも避暑地として人気のスポットだそう。
急な斜面を切り拓いた畑で収穫できる茶葉や高原野菜が特産品のようです。
茶畑。斜面が多く茶摘みが大変そう。
キャメロンハイランドの概要はこんなところ。観光地のためとりわけ治安も良く、英語も通じる、飲食店も豊富と、海外旅行の目的地としては文句のつけようもないですね。実際にマレーシアは仕事をリタイアした日本人の移住先としても人気。ここキャメロンハイランドで余生を過ごすことを決めた日本人の方も多くいるそうです。
ですが、今回はマレーシアにのんびり観光に来たわけでも、日々の仕事の忙しさに嫌気が差して羽を伸ばしにきたわけでもありません。目的はただ一つ。このジャングルのどこかに暮らす昆虫たちです。
キャメロンハイランドはマレーシアのジャングルの一部を切り開いて作った街。少し歩くだけでも簡単にその手付かずの自然にアクセス出来ます。
ジャングルの面積もさることながら、麓は500メートル、山頂は2000メートルと標高の差が激しいことも特徴の一つ。標高が低くて暑いところが好きな生き物、標高が高く涼しいところが好きな生き物とさまざまな種が観察できます。昆虫の数、種類ともに西表島とは桁違いのはず。まだ発見されていない新種なんかもまだまだたくさん隠れているに違いありません。さすがにこの旅行中に自分が新種を見つけられるとは思いませんが……
今回の狙いは、マレーシアならではの昆虫たちですが、その中でもぜひ見てみたいものをいくつかピックアップ。
まずは全ての小学生男子の憧れ、南米に生息するヘラクレスオオカブトと肩を並べるカブトムシ界の2トップ、コーカサスオオカブト。
マレーシアの国蝶で、世界最大の蝶の仲間であるトリバネアゲハの一種、アカエリトリバネアゲハ。
クワガタムシの中でも珍しい金色に輝くジャングルの宝物、オウゴンオニクワガタ。
その姿はまるで木の葉そのもの、かくれんぼ名人のコノハムシ。
図鑑や動物園では何度も見たことはあるこれらの昆虫。マレーシアの森の中で彼らと出会うことはきっといい思い出になるはず!なんとしても見てみたい!
ということで、彼らに出会えるのかどうかも期待しながら、次回に続きます。
ウミヘビ発見!2023/06/08
カヌーで川を進んでいると、水中を泳ぐ魚を見ることはよくありますが、今日は一味違いました。
クロガシラウミヘビ…でしょうか。
2メートル近いウミヘビがカヌーの下を悠々と泳いでいました。
完全水棲のためカヌーに登ってくることはありませんが、有毒のため注意が必要です。
実はウミヘビってコブラの仲間なので、とても強い神経毒を持つ種も多いんですよね。
総じて攻撃性は低いそうですが、その中でもこのウミヘビは比較的攻撃性もあるようです。沖縄県では過去には噛まれる事故も発生しています。
もしツアー中に出会った際は、見守るだけで、触ったりはしないようにお願いしますね。
スタッフ 船越
アオミオカタニシ
とてもきれいな緑色をした「アオミオカタニシ」。
カタツムリのようですが、名前のとおりタニシの仲間です。タニシといえば田舎の用水路など、水辺にいるイメージですが、ヤマタニシという陸生のものもいるんです。
沖縄方言では「おーるーちんなん」。おーるーは「青」、ちんなんは「カタツムリ」の意味です。
やっぱりカタツムリじゃないか。まあ昔の人も、こんなに綺麗なタニシがいるとは考えなかったのでしょう。
西表島のジャングル内では雨の日などによく見ることができますが、意外に沖縄県では準絶滅危惧種。鹿児島県内では既に絶滅したといわれている貴重な生き物です。
この美しい緑色、殻の色ではなくタニシ本体の色。殻は半透明の乳白色で、体の緑色が透けて見えているんです。
雨の日も多い西表ですが、そんな時でもよく観察してみると雨限定の生き物が姿を見せてくれるかもしれませんよ。
スタッフ 船越
ツアー当日朝、石垣島からご参加予定の皆様へ2021/06/28
7/1〜9/30の間、下記コースに当日朝石垣島からご参加予定の皆様は、7:30発上原港行きフェリーでのご乗船をお願い致します。
・ピナイサーラの滝上下カヌー&トレッキング1日コース
・マングローブカヌーショートコース
・マングローブカヌー&キャニオニング体験コース
・マングローブカヌー&由布島水牛車観光コース
暑さと混雑回避の為、またスムーズなツアー進行の為、夏季は早出をお願いさせて頂いております。何卒ご理解をお願い致します。
尚コロナウィルス感染拡大の状況により、フェリーが減便がされた場合は変更になる可能性がございます。
イワサキクサゼミの鳴く頃2021/04/27
4月もそろそろ終わり、GW直前。
季節外れの台風のためここしばらくは雨の日が続いていましたが、過ぎ去ってからは気持ちの良い晴れの日も多くなってきました。
新型コロナの影響でなかなか旅行へは行きにくい状況ですが、それでもサニーデイは感染防止対策を入念にしながら元気に営業中です。
春といえど西表では連日のように気温25度を超え、街を歩く人も皆半袖短パン。本州より一足早く夏へと突入したような気分です。
そこかしこから初夏の訪れを感じさせる、あの生き物の鳴き声が聞こえてきます。
イワサキクサゼミ
八重山ではよく見るセミですが、大きさは二センチという日本最小のセミです。
この時期にセミというとびっくりされる方も多いと思いますが、西表では3月〜11月まで、様々な種類のセミが鳴いているんです。
このセミは、サトウキビやススキといったイネ科の植物の近くに住んでいます。
草原で耳をすませると「ジイーーーーーーー…」という声が聞こえますよ。
動画はこちら。
小さい体の割にとても大きな声で鳴いています。
さほど珍しいセミではないので、天気の良い日中なら苦労せず見つけることができるはずです。
ちなみに、八重山にはこのイワサキクサゼミの他に「イワサキゼミ」「イワサキヒメハルゼミ」という似た名前のセミも生息していますが、実はこれらは全く別の種類になります。
余談ですが、セミの他にも八重山には「イワサキ〜〜」という名前の付いた生き物が多いです(以前紹介したイワサキセダカヘビ、イワサキワモンベニヘビもそう)。
これは明治〜昭和にかけての40年間を石垣島で暮らした気象観測技術者の「岩崎卓爾」さんのためにつけられたもの。
仕事である気象観測のほかに、八重山の生物や民族、歴史について研究していた岩崎さんは、発見した新種の生き物を知り合いの研究者に送っていました。
研究者は貴重な生き物を見つけてくれた彼に敬意を払い、その生き物達に岩崎さんの名前をつけているんですね。
スタッフ 船越