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 西表島チョウ図鑑22020/03/07

前回に引き続き、チョウの紹介です。

この前はアゲハチョウの仲間を紹介しましたので、今回はマダラチョウ、タテハチョウの仲間から。

 

マダラチョウもタテハチョウも「鱗翅目タテハチョウ科」というグループの近い仲間ですが、それぞれ「タテハチョウ亜科」、「マダラチョウ亜科」に属しています。

昆虫といえば脚は6本あるものですが、タテハチョウは前脚が退化し短くなっているため見かけは4本脚です。この脚は歩くことには役立ちませんが、味を感じることができるため食事の前に脚で触って味見をする仕草を見せるそうです。

至近距離まで近づく必要はありますが、慣れれば簡単にタテハチョウを見分けることができますね。

 

 

コノハチョウ

沖縄のタテハチョウ代表格といえばコレで、沖縄県指定の天然記念物でもあります。名前の由来はもちろん、誰が見てもわかる木の葉の形。驚くことに葉の葉脈、虫食い穴まで再現されていて、鳥などの天敵から身を守るため隠蔽擬態だとされています。気の幹に止まる時は必ず下を向いて、地面と垂直になるように「木の葉のポーズ」。徹底していますね。

 

 

コノハチョウは枯葉のような翅の裏側が有名ですが、以外と見る機会の少ない表側がこちら。同じチョウとは思えない綺麗な翅です。

天気の良い日には、日当たりの良い場所で翅を広げて止まるコノハチョウを観察することができます。これはタテハチョウの仲間の多くに見られる縄張りアピールの行動です。しかし翅を大きく広げるために自慢の枯葉模様が役に立っていない、それどころか派手な色で襲ってくれと言っているようなものです。

でも大丈夫。鳥に狙われたコノハチョウはすぐさま飛び立ち、森の中で「木の葉のポーズ」。逃げ去った「青とオレンジの派手なチョウ」を探している鳥には見つけられるはずがありません。うまく考えたものです。

 

 

 

リュウキュウムラサキ

これもタテハチョウ。西表島だけでなく、北海道を除く全国各地で目撃例がありますが、こちらも東南アジア、フィリピン、インドネシアなとが原産の迷蝶です。台風や季節風の多い5月から11月頃によく見ることができ、大きさは8センチから10センチくらい。
かなり広い範囲に生息するチョウですが、出身地から大きく五つに分けられ、それぞれ「大陸型」、「台湾型」、「フィリピン型」、「赤斑型」、「海洋島型」となっています。
翅の模様などが違うので、よく観察するとこのリュウキュウムラサキがどこから飛んできたのかを調べることができます。この写真に写っているのは台湾型でしょうか?

このチョウは寒いところでは成長できません。海を越えてやってきたチョウが子孫を残すことはありますが、基本的に冬を越すことができないため定着はしていないそうです。

 

 

 

ヤエヤマムラサキ

こちらのマダラチョウはいわゆる「迷蝶」。元々は東南アジアに生息するチョウです。翅を広げた時の大きさは8センチくらい。
季節風や台風の風に乗って飛来し、西表島では秋ごろに多く観察できますが、寒い冬を越すことができないので西表島に定着はできないとされています。
またこのチョウは、子育てをするチョウとも言われています。
「オオイワガネ」という木を見つけるとその葉に卵を産み、母親はその卵に覆いかぶさるようにして守ります(写真にある黄色いつぶつぶは全て卵)。
この体勢になるとちょっとやそっとでは動かず、こんなに近くで写真を撮っても逃げる事はありません。
なぜこのようなことをするのか、詳しいことはわかっていませんが、このチョウは故郷の東南アジアでは毒のあるチョウに似ていることもあり、覆い被さることで鳥などから卵を守ることができるから、とも言われています。

 

 

一方のマダラチョウも前脚は退化しています。しかしパタパタと素早く飛び回るタテハチョウと違い、マダラチョウの飛翔はパラグライダーのように非常にゆっくりとした風に乗るような動き。じつはマダラチョウの幼虫の餌の多くは毒草。そのため成虫になってもその毒を溜め込んでいるマダラチョウは、鳥から逃げ回るために素早く飛ぶ必要はないんです。

 

 

オオゴマダラ

八重山を代表するチョウで、翅を広げた大きさは大人の手のひらくらいと日本では最大のマダラチョウです。春から秋まで、ほぼ一年中見ることができます。
飛翔ははとてもゆっくり、貫禄のあるのんびりした飛び方です。
蛹は美しい金色で、金運アップの縁起物とされています。
西表島の有名な観光スポット、由布島ではこのオオゴマダラを繁殖しており、特設のビニールハウスの中で放し飼いにされたチョウを一年を通して観察することができます。
もちろん黄金の蛹や、ちょっと気持ち悪い色の幼虫も見ることができます。興味のある方はぜひ由布島に足を運んでみてください。

 

 

 

リュウキュウアサギマダラ

西表島では最もよく見るマダラチョウかもしれません。一年中観察することができ、天気の良い日は冬でもその姿を見ることができます。
白黒の地味な模様と思いきや、薄くはいった水色がワンポイントな、沖縄らしいチョウですね。翅を広げると、大きさは8センチくらいです。
このチョウの仲間には、よく似た模様ですが台湾、フィリピンなどから飛んできた迷蝶も多いので、いつものリュウアサ(リュウキュウアサギマダラの略。蝶の愛好家はこう呼ぶ)とスルーしていると、とんでもない珍蝶だったりということも。
慣れてくると飛び方を見るだけでわかるそうですが、僕はじっくり翅の模様を見ないとわかりません。

 

本州にはマダラチョウはほとんど生息していませんが、一種類だけ「アサギマダラ」というリュウキュウアサギマダラに名前の似たチョウがいます。このチョウは長い旅をすることで知られていて、夏の間は本州で過ごし、秋になると暖かい場所を求めて時には1500kmも南下することがあります。

西表島にも集団で渡ってくることがあり、数十から百頭ほどの群れで飛び回っていたという観察例もあります。

 

 

 

今回ご紹介したのはアゲハチョウと比べると地味で知名度の低いタテハチョウ・マダラチョウたちですが、独特な生態を持つものが多い種でもあります。

まだまだ紹介したいチョウはたくさんいるのですが、本業であるカヌーガイドを放り投げて昆虫写真家に転職するわけにもいかないので今回はこのへんで笑

 

皆さんもあちこちでチョウの乱舞する西表島を訪れて、一足先に春の到来を感じてみませんか?

 

スタッフ 船越

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